HIYADAMがITZYのDALLA DALLAをリミックス!MVも歌詞も遊び心たっぷり

ラッパーに焦点を当てて韓国のアイドルやヒップホップを紐解く変則回

 

今回のブログはK-Popとヒップホップを軸に日本のとあるラッパーだリリースした曲にフォーカスするという変則回。ラッパーにフォーカスするので韓国アイドルと関係ないでしょ?と思うかもしれないが、実はヒップホップと韓国アイドルはがっつり絡み合っている。なのでK-Popアイドルしか聴かないという人には新しい視点になるかもしれないし、今回取り上げる日本人のラッパー側からこのブログにたどり着いた人は、実はK-Popってかなりヒップホップだぜ!というのを知ってもらえたら嬉しい。自分はヒップホップ好きがR&Bを除くといちばんハマりやすいジャンルはK-Popだと考えている。なのでお互いのファンがお互いのジャンルに少しでも興味を持ってもらえたらありがたい。

 

 

 

 

 

 

現在いちばん売れているジャンルはヒップホップ

 

ヒップホップというジャンルにみなさんはどのような印象がありますか?日本で普通に生活をしていてヒップホップを聴くことはほとんどない。トラップというヒップホップの1つのジャンルが世界中で流行して何年も経過した。ジャスティン・ビーバーアリアナ・グランデといったアメリカの大物ポップスアーティストはもちろん、宇多田ヒカルまでトラップを取り入れている。AppleNIKEのような大企業のコマーシャルからYouTuberのBGMやTikTokで踊るときに使われる音楽まで、あらゆるところでトラップの影響を受けた音楽が使用されている。世界中でいちばん流行っている音楽がトラップもといヒップホップなのだ。

 

2017年の上半期にはアメリカでヒップホップとR&Bの売上がロックを超えた。特にストリーミング市場でのヒップホップの影響力がすごく、ヒップホップとR&Bが全体の30%を占めており、2位となるロックが16%と約2倍近い差がある。2021年の現在はヒップホップの人気はさらに成長、ストリーミング市場も成長し続けているのでいちばん聴かれている音楽がヒップホップという事実が定着し始めてきている。

 

FNMNL: アメリカでヒップホップとR&Bの売り上げが史上初めてロックを超える(2017.07.19)

 

 

K-Popアイドルとヒップホップはトラップが流行る前から密接だった

 

そんなヒップホップの時代になっている2021年。2005年ごろからヒップホップ好きになった自分としてはこんな時代がやってくるなんて思ってもいなかった笑。m-floRIP SLYMEKICK THE CAN CREWといったメジャーな舞台でも活躍していたラッパーはいたものの、基本的にはJ-Popとヒップホップには壁があった。安室奈美恵ZEEBRAの共演ぐらいしか基本的に両者が交わることはない。これは2021年になった日本でも基本は変わっていなくて、数年前にフリースタイルダンジョンという番組が大人気になったがヒップホップ自体が大衆に受け入れられる音楽になったかというと話が違う。32歳の女性でTohjiを普段から聴いています!みたいな人会ったことないでしょ笑。

 

 

それに対して飛行機で数時間。お近くの国である韓国のK-Popというジャンルではトラップが流行る以前からヒップホップと親密な関係だった。かっこよくて力強い男性グループにも可愛らしい雰囲気の女性グループにも絶対にラップ担当が存在している。ヒップホップをベースとしたコンセプトのグループもたくさんいる。特にYG関連のアーティストたちはヒップホップのイメージが強い。今や大スターのBLACKPINKは当然、iKONやBIGBANGなど軸としてヒップホップが存在している。そもそもYGエンターテイメントの創業者であるヤン・ヒョンソク(通称ヤンサ)がソテジワアイドゥルというヒップホップグループ出身だ。上に貼った動画を見てほしい、めちゃくちゃウェッサイ系でクラシックなヒップホップ。この感じでキャーキャー言われてるんだぜ。1995年に。久保田利伸で対抗するとしてもカードが足りないしR&Bだ。そのほかの事務所のアイドルたちもヒップホップを取り入れているし、ここ数年にガールクラッシュでデビューしたアイドルたちは全員トラップを取り入れた曲でデビューしている。

 

K-Popアイドルの例を挙げたが、K-HIPHOP自体も完全に世間に認知されている。Jay Parkが率いるAOMGやH1GHR MUSICはそこらへんのアイドル事務所より確実に勢いがあるし、Indigo MusicやJust Music、8BallTownなどレーベルも様々だ。SHOW ME THE MONEYや高等ラッパーなどヒップホップを取り扱う人気番組もたくさんある。ラッパーの芸能人化により自由度がなくなってきたと述べていた韓国のラッパーがいたぐらいヒップホップが大衆のものとして取り扱われているのだ。J-PopとK-Popのヒップホップの違いは凄まじい。

 

これは大衆の認知度とか、いかに普通の音楽にもヒップホップが取り入れられているのかという話です。日本と韓国、どっちのヒップホップが上みたいな話をしたいわけではありません。そしてロックとヒップホップどっちが上とか今の日本の音楽が嫌いとかそういう話でもありません。全て素晴らしいし自分は聴いています。ディスではない。disrespectです。自分の趣味である音楽に携わっているすべての方々ありがとう!

 

 

音楽としての相性がK-Popとヒップホップはそもそもいい

 

J-PopとK-Popのヒップホップとの親密度を大衆の認知度などから書いてきましたが、そもそもK-Popは音楽のスタイル的に相性がいい。日本の音楽はポップスがメイン。そしてロックやバンドが続く。韓国の音楽もポップスがメインなのは変わらないがポップスの種類が全く違う。日本の場合は基本的に演奏に合わせて歌っているのに対し、韓国はビートに合わせて歌っている。アメリカのポップスなんかはビートのタイプで、先ほども例に挙げたジャスティン・ビーバーアリアナ・グランデビヨンセ、リアーナ、レディー・ガガなどほぼ全てがこのパターン。ヒップホップの影響を全く受けずにビートに合わせて歌っているわけでもないのは、一般層に知られているぐらい有名なアーティストだとテイラー・スウィフトぐらいだろう。

 

ヒップホップが盛んなアメリカのポップスはビートに合わせて歌っている人が大半。だからこそヒップホップを簡単に取り入れることができるのだ。バンドスタイルが大流行したのなら本来の音楽スタイルを変えないといけない。ジャスティン・ビーバーには容易だろうが、ビヨンセとかだと簡単にはいかない。

 

K-Popの場合は先ほども言った通りビートがメイン。BLACKPINKのようなコンサートではバンド必須みたいなグループもいるが通常は違う。ファンクが大流行した2020年のK-Popだが、ファンクバンドを引き連れてパフォーマンスをした人はいない。AOAやWonder Girlsがバンドスタイルを披露したことがあるが、彼女たちの作品全体で考えると特別な部類に間違いなく入る。よってK-Popはヒップホップを取り入れやすい環境にいる。それにクリスチャンが多いのでゴスペルのようなジャンルの曲を歌う環境が日本人より圧倒的にある。

 

 

あとこれは自分の想像だがゲームやパソコン関係もあると思う。韓国では日本と違ってパソコンでゲームをするというカルチャーが根付いている。日本人だとパソコンゲームをしています!と言うとゲームオタクっぽい雰囲気が出るが、韓国ではPCバンというインターネットカフェのようなものが根付いており、PCバンにゲームをしに行くというカルチャーがしっかりある。パソコンの普及っぷりが全然違うのだ。なので日本人がバンド始めてみよっかな〜と思う感覚でパソコンで音楽を作ってみよかな〜という人がいると思われる。それにソフトを取り込むだけなのでスペースも食わず、楽器屋に行く1歩を踏みさなくていいのでハードルも低い。パソコンで音楽を作るとなったらビート作り。ということはヒップホップの距離が近い。808だってすぐそこだ!こういう部分も影響していると思う。

 

実際に日本はポップスの次にバンドやロックが多い。年間のトップチャートに入るグループもそうだ。2020年はOfficial髭男dismやKing Gnuあいみょんなどがランクイン。00年代はL'Arc〜en〜CielやORANGE RANGE、ASIAN KANG-FU GENERATION、GReeeeN。大御所もMr.Childrenサザンオールスターズのようなグループ。それ以外はアイドルやEXILE関連。浜崎あゆみだって田原俊彦近藤真彦とともにたのきんトリオを組んでいた野村義彦、通称よっちゃんが相棒だ。安室奈美恵宇多田ヒカルといったブラックミュージックをベースとしたアーティストも世間一般で人気のある売れている曲は歌モノだったりポップスだったりする。漫画もアニメも映画もヒットしたNANAだってバンド。ヒップホップのクルーの話だったら絶対売れてないでしょ笑。K-Pop好きから認知されているオカモトレイジが所属するOKAMOTO'Sもバンド。

 

ヒップホップ好きな人にもバンドやロックも聴く人はたくさんいる。ジャンルによる差別なんて感情は自分もない。ただヒップホップをベースに音楽を聴いていた自分としてはJ-Popは全くの別物で全ての曲がすんなり聴けるというわけではないのだ。音楽をスポーツとして考えてみよう。バンドで歌うことを手をベースで扱う球技、ビートで歌うことを脚をベースで使う球技とする。そうするとロックは野球、J-Popはソフトボールだ。別競技だが野球からハンドボールへの移行は比較的しやすいだろう。共通した部分も多い。ヒップホップはサッカーでK-Popはフットサル。プロ野球選手ならソフトボールでもある程度は活躍できるだろう、しかしイチローであってもサッカーにすんなり対応できるとは思えない。本田圭佑はフットサルでも活躍できるがいきなり変化球を打ち込むことはできないだろう。プロのなれるほどの運動神経があっても壁にぶつかる。これは一般人レベルだって同じだ。自分のような音楽リスナー、つまりはスポーツ観戦だってそう。ハードコアサッカーファンはフットサルなら理解できる部分も多いし楽しめるだろう。ただ野球も面白く感じるかといったら違う。大きな枠としてはスポーツで一緒なのに。

 

このような理由から自分はヒップホップ好きの人がR&Bを除くと一番ハマりやすいのがK-Popだと思っている。楽しめるポイントがしっかり用意されているのだ。

 

 

 

 

 

HIYADAMというラッパー

 

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Photo by Twitter(@hiyadam_011)

 

前置きが長くなりましたが今回紹介するのはHIYADAM(ヒヤダム)。1996年生まれ、札幌出身。母親の影響で幼少時代からブラックミュージックに影響され、16歳で『第3回高校生RAP選手権』にて優勝。現在はフリースタイルではなく音源をベースに活躍しているラッパー。ファッション業界からの注目度も高い人物である。

 

 

柔軟に自分らしさを表現する

 

そんなHIYADAMの素晴らしいと思う部分は柔軟性だと自分は思っている。いわゆる日本人ラッパーという枠に当てはまらず自分の好きなことを自由にして表現している感じがめちゃくちゃ伝わってくる。ハウスやエレクトロみたいなビートでラップをするときもあればトラップ系の曲もあって、そのときにやりたいスタイルを披露している感じがして全く型にはまっていない。それでいてしっかりハード。ファッションが目立っている印象があるが別にそっちで話題を持っていっているわけではない。Lil Pumpのようなキャラクターとラップが9:1みたいな人ではない。変なことを言っていたらHIYADAMさんすみません。

 

 

韓国勢とのコラボも積極的

 

このブログはK-Popを扱っている。ではなぜHIYADAMを取り上げたのかというと韓国勢とのコラボレーションも積極的に行っているからだ。本題はもうちょっと先になるのだが、ここでHIYADAMがこれまでに行った韓国勢とのコラボレーションをチェックしてみよう。

 

Alice Vicious - Feel Better Feat. HIYADAM

 

 

まず紹介するのはAlice ViciousのFeel Better。当時たまたまSoundCloudで発見して聴いてみたらめちゃくちゃかっこよかった。ビートがしっかりトラップなんだけどすごくポップで楽しい。当時ってまだK-Popにトラップはそこまで浸透していなかった。なので韓国の人ってこんなに面白くトラップを取り入れるのか!とすごい驚いた記憶がある。この曲に客演で参加しているのがHIYADAM。彼自身の楽曲だとここまではっちゃけている曲がなかったので新鮮だった。

 

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HIYADAM - WHY DO FUCKBOIS HANGOUT ON THE NET (REMIX)

 

 

続いて紹介するのは韓国で大人気のラッパーKid MilliのWHY DO FUCKBOIS HANGOUT ON THE NETのリミックスで、Nasty Men$ahがMVを撮影。今でこそ韓国のラッパーと仕事をする日本人も増えてきたが、HIYADAMは先駆けだと思う。オリジナルもかっこいいしリミックスもかっこいい。K-PopやK-HIPHOP好きの人ってなんか日本の曲を下にしがちなイメージがあるけど糞食らえだね!

 

Kid Milliが日本に来日した際にHIYADAMと一緒にインタビューした記事がなぜかファッション雑誌のGINZAからリリースされているのでリンク貼っておきます。GINZAの読者ってKid Milli知ってんの?

 

GINZA: 日韓新鋭ラッパー2人のスペシャル対談 Kid Milli × HIYADAM

 

 

HIYADAM - Un Deux Trois Feat. Kid Milli, YUNHWAY

 

 

客演、リミックスときて今度は自身の曲に呼んじゃった!しかも2名も!先ほども出てきたKid Milli、そしてSHOW ME THE MONEY8で有名になったYUNHWAYも登場。この曲と同じアルバム『Antwerp Juggle』に収録されているBrainにはプロデューサーとしてl33suhoが参加しており、韓国勢絡みの曲が複数ある。

 

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とこんな風に韓国関連の曲が複数あるHIYADAM。そんな彼がものすごい曲をアップした。すごく長くなりましたが本題です。その曲の名前はDALLA DALLA (REMIX)。ITZYのリミックスだー!!!!!

 

 

 

 

 

HIYADAM - DALLA DALLA (REMIX)

 

 

とりあえず動画を見てみよう。めちゃくちゃITZYだし、K-Popファンには完全に刺さるから。

 

 

オマージュが面白いMV

 

 

DALLA DALLAのビートに持ってかれると同時に映像にも持っていかれる。本家のDALLA DALLAのMVのティーザー、本編の最初のパートでも出てくるエレベーターのシーンをHIYADAMがオマージュをしている。ロケーションがエレベーターだという共通点の上に、エレベーター内の監視カメラ目線で撮影されているというのも一緒。ITZYはカメラに気づいて服を投げつけていたが、HIYADAMはカメラにかましてくる。

 

ITZYの場合は練習生だった彼女たちが着替えてITZYに進化。そしてK-Pop界を登っていくという印象だった。なので練習生として特訓中、ITZYになる前の姿は明かさないという意味で着替えをカメラに投げつけている印象だった。エレベーターが開いて登場するときにはスタイリングばっちりなわけだし。それに対してHIYADAMはすでに活動してるし隠す必要なんてない。それにエレベーターの中に自分の仲間を呼んでいるから、こいつらと一緒に登り続けてやるぜ!って感じかなと思った。でも最後1階に戻ってるし、もう1人のHIYADAMが現れてるからぶっちゃけわかんない笑。ITZYもラストはエレベーターに戻ってるからそこらへん絡めてるのかな?誰か教えて。スーツケースが登場するのもITZYサンプリングだと思う。

 

あとJUBEEがレオパードのアウター着てるんだけど、これもITZYのサンプリングかも?深読みしすぎの可能性は正直高い。JUBEEのJoyrideはマジで最高。ってかJUBEEもITZYのビートいけそう。ちなみに撮影のディレクションは先ほども登場したNasty Men$ah。

 

 

歌詞でもITZYたちをサンプリング

 

MVだけでもMIDZYやK-Popファンは十分楽しめるのだが、歌詞でもK-Popをサンプリングしている。

 

Bad, bad, I'm sorry I'm bad, I'm just the way I am

 

HIYADAMがサビで使っているリリックはDALLA DALLAのリュジンのラップのバースからのサンプリング。オリジナルでは1回しか言わない部分だが、HIYADAMの場合はこのフレーズだけでサビを作っちゃってる。渋いよね。

 

 

Ooh, 잠깐만 잠깐만 연락이 이제야 오는걸 Woo

 

 

では逆にトラップのパートは何を歌っているのか。それはITZYの先輩で同じくJYPエンターテイメントに所属するTWICEのLIKEYのダヒョンをサンプリング。LIKEYのトラップパートの部分をDALLA DALLAのトラップパートで使うというJYP祭り。ものすごくラッパーらしいことをK-Popを使ってやる。K-Popファンにとっても楽しい1曲だ。K-Popのアイドルたちもサンプリングを結構使うのでやっぱりヒップホップとK-Popは同じように組み立てられるようだ。

 

HIYADAM自身の作品としてもDALLA DALLAのリミックスはすごく自然。本人名義の最近の曲は結構ハウスとかエレクトロ色が強かった。トラップは客演のときだけみたいな。その作品のバランス感がそのままDALLA DALLAのビートのバランスに現れている気がしてごくごく自然に行われたリミックスだと思う。Tokyo Driftより今のHIYADAMには完全にマッチしてますわ!

 

 

 

どちらサイドのファンも楽しめるリミックス

 

今回はHIYADAMのDALLA DALLA (REMIX)を紹介してみました。K-PopファンはMVはもちろん歌詞でも楽しめる上に、K-Popとヒップホップの相性の良さを実感できる作品だったと思う。そしてヒップホップ好きの人はK-Popのビートの面白さ、韓国アイドルも結構渋いですよ!というのに気づいてもらえたと思う。両サイドとも好きな人は単純に面白いし、いちばん楽しめたと思う。自分なんて即興でブログを書いちゃったぐらいだからね笑。

 

というわけですごく面白かったDALLA DALLAのリミックス。HIYADAMファンはもちろんのことMIDZYやK-Popファン、ヒップホップファンなど幅広い人が楽しめると思います。ぜひチェックしてみてね!両サイドのファンのためにHIYADAMの最新アルバム『Tired Caroline』とITZYの最新アルバム『Not Shy』を貼っておきます。次回のブログで会いましょう。ではまた!

 

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LEGGOですブログ: ITZY aka 味のなくならないガムが新しいEP『Not Shy』でカムバック

 

 

 

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