ITZYのCRAZY IN LOVEはこれまでの要素をたっぷり入れたバランス抜群の集大成アルバム

ITZYが待望のファーストフルアルバム「CRAZY IN LOVE」をリリース

 

2019年2月12日にデビュー、それ以降も短めのスパンで新曲をリリースし続け、若手でありながらすでにK-Pop界のスーパースターになったITZY(イッチ, イッジ)が初のフルアルバムをリリースする。かなりの頻度でカムバックを果たしているITZYだが、意外とK-Popではフルアルバムを出す機会がないので「これが初めてなの?」とびっくりした人も多いだろう。

 

 

デビューからの圧倒的なITZYの勢い

 

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Photo by Facebook(@ITZY)

 

女性若手アイドルの筆頭、すでにスーパースターの仲間入りを果たしているITZYはデビュー当時から圧倒的。この人気っぷりは彼女たちの実力や音楽のかっこよさはもちろんのこと、周りを取り囲む環境やK-Popの現状なども大きく影響したと考えられる。

 

外的な要因

 

まずはJYPエンターテインメント出身ということ。最近のSTAYCのように事務所が小さくても人気が出る若手というのは存在しているが、そんなのはかなり稀な話。やはりJYPという昔からK-Popの三代事務所と呼ばれていた会社からデビューすると自動的に注目度は高い。事務所がプロモーションにかけられるお金もかなり違ってくる。衣装だってデビューシングルの段階でフェンディとか着ちゃってるし。

 

そしてJYPからの流れで、TWICEという全盛期真っ最中のアイドルが事務所の先輩であったことも大きい。そりゃ全盛期バリバリの後輩がデビューすると言われたら、全てのK-Popファンが注目するのは当たり前。「TWICEはTWICEで、ITZYはITZY」みたいなことを言いたい気持ちもわかるが、注目されるきっかけの話でそんなことを言うのはおかしな話だろう。ライトなK-Popファンでも知っているアイドルの後輩アドバンテージは絶対に大きい。

 

またK-PopとしてもBTSやBLACKPINKといったグループがアジア圏以外、アメリカなどといった国へのプロモーションを積極化、K-Popというカルチャーがどんどん広まっていた時期にデビューしたことも大きいだろう。MVの再生回数やSNSのフォロワーが最初から高かった、そして昔のアイドルたちとは比べ物にならないというのは、K-Popファンの母数が以前とは全く違うというのも影響している。

 

 

これらの要因はITZYの外側の話だが、彼女たち自身も注目される要素がたくさんあった。

 

練習生時代から注目されていたメンバーたち

 

 

SIXTEENに出演していたチェリョン、MIXNINEに出演していたリュジンなど、JYPの練習生として過ごしていた時期からメディア露出をしていたメンバーがほとんどであるITZY。サバイバル番組出身のグループなどもそうだが、本来なら練習生時代というのは表に出てこないが、いわば素人の段階からファンが感情移入することができる環境を提供しておくのはかなり強い。デビューしたばかりの新人の段階ですでに固定のファンがいるのだから。IZ*ONEもデビュー当時から圧倒的な人気を誇り、スーパースターの仲間入りをしたグループだが、もしプデュではなく普通にデビューした新人だったらなら、あのレベルの人気にまでデビューから3年弱ではなれなかったかもしれないし、あのスタートダッシュは不可能だっただろう。練習生の段階でビジネスにできる上にデビューした段階で多くのファンも見込める、そりゃサバイバル番組が量産されても不思議じゃないよね。

 

 

彼女たち自身の力で練習生時代から注目されていた上に、JYPエンターテインメントにはソミという存在がいた。チェリョンと同じくSIXTEENに出演、合格間違いなしと思われながら落選したソミはPRODUCE 101で再びサバイバルの舞台へ。見事1位となり、I.O.I.のメンバーとして活動をすることとなった。I.O.Iが大人気になったこともあり解散し、JYPエンターテインメントの練習生という立場に戻ってからも大活躍をしていた。ただ他のI.O.Iのメンバーたちが自分たちの事務所からどんどんアイドルデビューしていくのに対し、ソミのデビューの話はなかった。それでも彼女に対する関心は減る気配がなく、自分の事務所からアイドルデビューした経験がない練習生としてはK-Popの歴史上いちばん注目が集まったのはソミだろう。そんなこともあってTWICEのコンサートにソミが練習生たちと見学しにいった際にはソミ自身はもちろんのことながら、一緒にいた練習生たちも写真を撮られ、将来ソミと一緒にデビューするであろう練習生たちという風に紹介されていた。そう!このとき一緒にいた人物たちが今のITZYである。

 

 

このようにメディア露出があった上に、ソミがいたことで他の一般的な事務所の練習生たちよりも注目する機会が多かった彼女たち。そこに外部的な要因も重なって、スタートダッシュの準備がこれ以上ないほどに整っていた。そのチャンスをしっかり乗りこなし、実力をどんどん見せつけていった彼女たちは、若手でありながら全てのK-Popファンが知る存在へとなった。おそらくライトなK-PopファンでもITZYの名前は確実に知っていることだろう。そんなITZYは初のフルアルバムリリースの段階で次のフェーズへと差し掛かかろうとしている。遂にITZYが日本デビューをする。

 

 

今作から日本へのプロモーションも本格化!イルデの準備段階へ

 

 

カムバックの情報が徐々に公開されていくタイミングと同じ時期に、ITZYが日本デビューすることがアナウンスされた。渋谷の109で広告が出されてたり、今までのタイトル曲をまとめた作品を日本向けにリリースしたり、日本の市場向けのプロモーションが徐々に始まってきた。ファーストフルアルバム「CRAZY IN LOVE」の日本向け公式通販も準備されており、今作を通じて日本人向けのイベントも行われる予定だ。つまり正式な日本デビューはまだ先の話だが、実質的なイルデというのは今回から始まると考えていいだろう。

 

韓国アイドルというのは基本的に7年で終了する。もちろん契約更新をするパターンなどもあるが、全員が揃って8年目以降もアイドル活動を行うことは稀だということはK-Popファンの皆が知っている話だ。なので自分は韓国アイドルというのは1年目が新人、2~3年目が若手、4~5年目が中堅、6~7年目がベテランという風に見ている。6年と聞くと早い感じがするかもしれないが、OH MY GIRLが2015年デビューで6年経ったグループと考えると、韓国アイドルの立ち位置として考えると結構妥当な気がする。

 

 

ITZYは2019年2月なので3年目、つまり半年もすれば若手から中堅に部類されるアイドルへとなる。流石にフルアルバムを出した数ヶ月後にカムバするとも考えにくいので、若手として韓国でリリースするアルバムは今作がラストかもしれない。そして彼女たちに興味があるかどうかは置いておいて、知っているかどうかという話ではほぼ全てのK-Popファンが知っているだろう。もちろんピュアな新規ファンも増えるだろうが、以前に比べると絶対数は少なくなっているはず。では母数を獲得するために次に狙うのはどこになるのか?それはK-Popを聴いていない層や他の国ということになってくる。そう考えるとこのタイミングでのイルデ発表はかなり良かった気がしてくる。

 

来日してイベントやショーケースを行うのはコロナによってまだ先の話になりそうだが、日本で活動する道や方法というのはTWICEがしっかりと示してくれているので、それに沿うようなカタチでビジネスを広げていけば、まあ間違いはないだろう。日本ツアーなんかもかなりやりやすいはずだ。TWICEと同様に本国での地位も確立してからのイルデだし、日本のK-Popファンからの認知度もめちゃくちゃ高い。それにTWICEの頃に比べて、K-Pop好きの数も圧倒的に増えている。TWICEやIZ*ONEみたいに日本人メンバーは所属していないが、そんな要素がなくても感情移入しやすいポイントはたくさん作れるだろう。みんなに知られる存在になったことで、ある意味横ばい的な印象が最近ではあったが、再び急上昇する可能性は高い。

 

 

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Photo by Twitter(@ITZYofficial)

 

そんなわけでファーストフルアルバムってだけでも注目なのにITZYの現状やこれからなど、様々な理由から今作「CRAZY IN LOVE」はデビュー以降初めての大きなポイントになるんじゃね?と個人的に思っている。ITZYが好きだからカムバしただけでも普通にアイドルより注目してるのに、ITZYの歴史として考えると大きなカムバに感じるから、もう大変だよね笑。

 

 

というわけで前置きが長くなりましたが、ITZY待望のファーストフルアルバム「CRAZY IN LOVE」を早速チェックしていこう!

 

 

 

 

 

 

ITZY - CRAZY IN LOVE

 

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Photo by Twitter(@ITZYofficial)

 

今作「CRAZY IN LOVE」はフルアルバムということで、新曲(9)+これまでのタイトル曲のインスト(6)+Thanks to.というメッセージ、の17曲入りとなっている。このブログでは新曲パートに当てはまる1~9曲目のレビューをしていこうと思う。

ちなみに17曲目の「Thanks to. (Voice track for MIDZY)」はApple Musicでは聴くことが出来ない。実際にアルバムを購入した人専用となっている。

 

 

1. ITZY - LOCO

 

 

1曲目は今回のタイトル曲であるLOCO。初めてのフルアルバムのメインとなる曲ということで、いかにもITZYらしい楽曲になっている。

 

 

「DALLA DALLA」「WANNABE」を手がけたGALACTIKAがプロデュース

 

LOCOの作詞作曲にはデビュー曲であるDALLA DALLA、そして人気を確立させた代表曲であるWANNABEを手がけたGALACTIKAというチームが携わっている。初のフルアルバムのタイトル曲ということで、これまでのITZYにとって重要な曲を作った人を再び招いたのだろう。自分のLOCOに対する第一印象が「いかにもITZYらしい」というものになったのは、これが影響しているからな気がする。ちなみにアルバム全体のプロデュースはJ.Y. Park。

 

 

K-Popの裏のトレンド?808 Glide

 

 

もう何回もこのブログでは登場しているので「またかよ!」って感じかもしれないがLOCOを含め、CRAZY IN LOVEで多用されているのでここでまとめて紹介しておく。Travis Scottのgoosebumpsで多用され、様々なヒップホップの曲で使われるようになった「808 Glide」というサウンド。文字通り808の音をGlideさせたもので、わかりやすくいうと「ぐいーん」や「ぶいーん」みたいな低音を引っ張って滑らしたというか、伸ばした感じの音。LOCOのイントロ部分から登場し、曲全体を通してもよく聴こえてくる低音がこのスタイルに当てはまる。最近このブログで取り上げた韓国アイドルだと、LOONAのNot FriendsやSTAYCのSO BADでも多用されている。男女問わず本当にたくさんのグループが採用していて、ダイレクトに使ってみたり、ちょっとしたアクセントに使ったりと幅も広い。

 

2017年にTravis ScottのgoosebumpsがリリースされたときはK-Popにはあまり影響しなかったが、UK DrillやBrooklyn Drillなどドリル系の曲が流行った以降はK-Popにも影響するようになってきた。特に2020年以降ぐらいの楽曲では結構な頻度で登場するようになる。元々ヒップホップの一大ジャンルであるトラップがK-Popでも海外のポップスのように当たり前のものになっていたので、ハイハットなどトラップの影響をかなり受けている韓国アイドルが、同じくトラップの影響を受けたドリルの要素を取り入れるのは自然な流れである。

 

 

ITZYの"THAT'S A NO NO"をApple Musicで

 

そんなわけで2020年以降のわかりやすいK-Popのトレンドといえばファンクやディスコ、レトロといったものだったが、目立たない部分だが当時に808 Glideもどんどん広がっていた。ITZYの場合はTHAT'S A NO NOでかなりわかりやすく取り入れており、2番の最初のリュジンのパートではビートチェンジとともにオートチューンも使っちゃって、かなりそっち寄り。今回のアルバムだとわかりやすく取り入れているのはLOCO、#Twenty、LOVE is、Chillin' Chillin'。似たようなノリとか細かくという意味ではもう少し対象のある。

 

実はITZYはかなりヒップホップ寄りな韓国アイドル?

 

808 Glide的な音の他にもヒップホップ的な音を今回も多用しているITZY。近年のガールクラッシュといえばヒップホップやトレンドを用いた楽曲が多く、BLACKPINKやEVERGLOW、aespaなどデビューした際の楽曲は完全にトラップベースだった。それに対して、ITZYはこれまでダイレクトにトラップをタイトル曲で使用したことはない。強いていえば마.피.아. In the morningはそっち系だが、GUESS WHOの他の曲の方がトラップ色は強かったし、BLACKPINKたちのそれに比べるとかなり弱い。

 

ただ曲全体の印象とは裏腹に、細かい部分ではかなりヒップホップ的な音を採用しており、Not Shy以降はその気配が特に強い。またB面の曲ではIT'z ICYのCHERRYでその気配を見せて以降、24HRSやSHOOT!のような曲も出してきた。そんなわけでITZYはヒップホップを軸にしているわけではないけど、採用自体はかなりしているグループという風に自分は感じている。なので마.피.아. In the morningが収録されているGUESS WHOがリリースされた際に、「ガールクラッシュに走りすぎ、YGじゃないんだから」みたいな意見も結構あった気がするが、「え?そう?かなりITZYらしいアルバムだと思ったけど」という風に自分はなったわけだ。

 

LEGGOですブログ: ITZYのGUESS WHOはトレンド度外視!スタイルを貫いたトラップアルバム

 

 

というわけで今回のアルバムでも結構そっちノリの音が出てくる。自分が元々はヒップホップが好きだったから、どうしてもこういうタイプの音が目立ってしまい、「ITZYはヒップホップのノリが地味に多いグループ」という風に感じてしまっているのかもしれない。ただそういった方向性のITZYの話をしたことがないので、自分のみの印象で可能性はある。一般的な意見はどうなのかめちゃくちゃ気になる。どんな感じです?現行のヒップホップもしっかり聴いていて、ITZYをデビューから聴いている人は自分と同じ意見になると思ってるけど。

 

 

イントロのワクワク感とは裏腹に割と淡白な印象

 

先ほど説明した808 Glide的なサウンドインパクトのあるメロディなども影響して、かなりハードな印象から始まるLOCO。なのでサビやビートチェンジでは更にパワフルなサウンドになるかと思ったが、意外と淡白な感じで終了する。もちろん歌い方でハードな感じになったり、特殊な音が加えられたりもするのだが歌がないこともあり、イントロ部分のサウンドがいちばん印象的で、出だしの雰囲気が最後までみたいな。なので個人的にはLOCOはかなりさっぱりとした曲だと思った。

 

そういった意味でのインパクトという点では、これまでのITZYのタイトル曲の中でいちばん弱かったと思う。みなさん的にはどうでしょうか?なので元々好みじゃない曲を除けば、CRAZY IN LOVEの中で個人的にいちばんハマっていない。これまでのタイトル曲だとWANNABEがいちばんハマっていないので、代表的な曲にはいつもGALACTIKAが!とか言っておきならが、両者の組み合わせが自分にはあまり合っていないという笑。これはLOCOやWANNABEが平凡でインパクトが薄く、微妙だったという意味ではないのでご注意を。日本で行われなかった2019年のITZY PREMIERE SHOWCASE TOURのグッズのTシャツをわざわざ海外から取り寄せるレベルでは好きなグループだからね!ってか現役で3位。

 

ITZYの"LOCO"をApple Musicで

 

 

2. ITZY - SWIPE

 

 

カムバにあたってのティーザーで注目し、今回のアルバムの中でいちばん気になっていた楽曲がSWIPE。なのでこのMVもレビューしたかったので若干のタイムラグが生まれるものの、アルバムレビューのブログをSWIPEが公開されてからアップしようと思っていた。

 

 

トラップが軸となったキャッチーなK-Pop

 

 

SWIPEが気になったポイントとは違うが、のちの内容にも繋がる部分なので最初に音楽的な特徴から。もうこれはどう考えたってトラップが軸になっていると言っていいほどに、わかりやすく特徴が出た楽曲。曲の雰囲気としては韓国アイドルがカバーしたり、JAMIEがリミックスに参加しているし、普通にヒット曲なのでK-Popファンも知っている人が多そうなSaweetieとDoja CatのBest Friendのノリと完全に一緒。ただSaweetieはヒップホップなのに対して、ITZYはK-Popなのでよりキャッチーに仕上がっているし、一生ハイハットがなっているわけでもない。サビ前はトラップじゃないし。あくまでもトラップ的なK-Popであって、K-Pop的なトラップではない。ってかトラップ的なK-Popという面でITZY史上過去最高。

 

ビートもサビも歌詞もわかりやすくて、耳に残るってにもポイント。

 

 

完全Z世代向け!100%SNS意識でビジネス色も過去最高

 

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Photo by Twitter(@ITZYofficial)

 

ここからは曲自体の意味というか、立ち位置や個性などについて。

 

まずSWIPEのコンセプトイメージとしてリリースされた写真が完全にスマホ意識。スワイプというタイトルも完全にそれ。そして次に公開されたMVのティーザーが縦動画。もうどう考えたってTikTokやインスタなどSNSを意識した曲に仕上がらないわけがない

 

実際にアルバムがリリースされてSWIPEを聴き、MVもチェックしてみるとやっぱりその通りだった。唯一違ったのはMVの画角が普通だったということ。そこは一般的なMVと一緒なんだね!とは思ったものの、全てがZ世代向け。バズるための要素をたくさん持っており、マーケティングや後々の影響とかを考えると、ITZYのこれまでの楽曲の中で圧倒的にビジネス色が強い楽曲になっている

 

一切隠さず出てくるTikTok狙ってます感

 

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Screenshot: YouTube(ITZY “SWIPE” M/V)

 

たくさん登場するスマホや縦画面の映像、どこかで見たことのあるアプリのデザイン、そのアプリで見かけたダンスのエフェクト、そしてQRコード。その全てがTikTokに通じている。逆にTikTokのロゴが出てこないことが不思議なぐらいだ。MVを見るだけでもそのノリが強いことがわかるが、SWIPEという曲自体の様々な部分も細かく見ていくと完全にTikTok狙いということがわかってくる。スマホ感が弱いシーンも家だったり、おちゃらけているシーンだったりと日常感があって、SNSというものに通じる部分が多い。

 

ちなみにMV内のQRコートはITZYのTikTokのアカウントで、このブログの画像からもしっかり飛べた。なのでITZYをフォローしていない人は上の画像からどうぞ笑。

 

これで踊ってくださいよ!と言わんばかりのサビ

 

なんと言ったってサビのダンス!SWIPEという英語が全くわからない人でも理解できそうな単語とそれにフィットした振り。しかも運動神経とか関係なくてもできちゃうぐらい前半部分は簡単。後半も簡単だけど若干動きが出るのでちょっと練習は必要かもしれないが、TikTokで誰もができそうなレベルの難易度。しかもシンプルにビートに合わせたダンスなので、リズム感もよく、TikTokのようないい意味で軽いコンテンツとの相性も抜群。TikTok重視で喋ったが、インスタのリールに投稿したっていいし、YouTubeのショート動画でも全然いい。

 

ダンスの難易度とかが話題になりがちなITZYが、こんなも簡単でわかりやすい振り付けの曲を出したことはなかった。ものすごくZ世代向けのマーケティングを意識したビジネスライクなダンス。個人的にはすごく好き。

 

エフェクト的にもSNS向け

 

 

先ほど説明したのはダンス、つまり画面にいる本人の動きなのでカメラ的には固定になるのだが、SWIPEはカメラを動かして遊ばせる事も可能。MVに出てくるようなスワイプして場面切り替えをしたり、VLIVEでITZYたちがやっていたシンプルにカメラを移動させるパターンもある。踊っても踊らなくても遊べる要素があるってのはかなり強いでしょ。創作する力がある人ならITZYたちがやらなかった事以外でもSWIPEという単語をもじった遊びをたくさん生み出せそうだし。コンテンツが成長する見込みまであり、しかもバズる楽曲になればMIDZYやK-Popファン以外もSWIPEで遊んじゃう。それがもたらす効果については後ほど。

 

TikTokとヒップホップについて

 

SWIPEのジャンルがトラップを軸にしたK-Popというのも結構ソーシャルメディア向け。ヒップホップはどうしてイカついイメージがあるので、TikTokなどで踊っている若者とリンクしにくいかもしれないが、実はそういった層との相性がいい。日本人はヒップホップに馴染みがなく、みんなが聴いているジャンルではないが、海外での人気は確立されている。これは自分がヒップホップ好きだからバイアスが入っているというわけではない。実際に海外のチャートなどを見てもらうと、日本とは比べ物にならないぐらいヒップホップが支持されていることがわかる。トップ層のポップスの歌手は別として、一般的なポップスなんて誰が聴いてるの?と言いたくなるぐらいだ。こんなの日本じゃありえない。

決してヒップホップがポップスより上という話ではないのでご注意を。

 

 

そんなわけで若者からのヒップホップの支持もかなりあって、実際にTikTokなどでヒップホップの曲で踊っている人はかなり多い。逆も然り、ラッパー側がTikTokのようなメディアを意識して曲をリリースする事も多く、TikTokきっかけで流行る曲なんてのも当たり前のようにある。この現象に関しては日本でも同じ。

 

というわけでヒップホップやトラップの曲というのはかなりTikTok向けなのだ。実際にロックとかより踊っている人が圧倒的に多いでしょ。なので音楽のジャンルとしてもSWIPEはかなり向いている。サビなんてダイレクトにトラップだし。

 

SWIPEがバズれば日本デビューにも繋がる

 

SNSというのは100%切り離すことはできないが、いわばK-Popとは別の場所の話。だって流行りのダンスの曲がどこの国の何というアーティストのものかなんて知らない人の方がほとんどでしょ。つまり関係のない人を巻き込む力がある。つまりMIDZYやK-Popファンだけでなく、韓国アイドルに興味ない層も巻き込むことができる。

 

K-Popを知っている人のほとんどがITZYを知っているのが現状、それぐらいのレベルの存在になった。つまり母数を増やすにはK-PopファンからMIDZYに変化させるというのもあるが、YouTuberでいうところの、チャンネル登録はしていないけど結構チェックしているという人を巻き込むことの難しさと同じで、難易度としては高め。ということは関係のない層を巻き込む方が母数を増やすには手っ取り早いということになる。つまり、

 

SWIPEという曲で踊っているのを見かけた→曲を調べた→ITZYという存在を知った→興味を持った

 

というルートを確立したい。ジャンルや内容は違うけど口コミで広がった鬼滅の刃や、TWICEのTTで知った日本人的な。興味を持った人がITZYがK-Popのグループということを知り、間も無く日本でデビューをすることを知ったら、実際にデビューした際にITZYに関するコンテンツをチェックするかもしれない。いわゆる初心者、にわか、ライト層をどれだけ巻き込めるかがスターかどうかになってくるかどうかなので、イルデ前に日本でもバズる可能性がある曲をリリースしたのは今後のビジネス面においても、タイミング的にかなりよかったと思う。

 

 

このSWIPEのコンセプトの画像がアップされた段階で、イルデまでの流れがパッと思いついたので個人的にいちばん楽しみにしていた曲ってわけ。そして蓋を開けてみたらZ世代向けの100%SNS意識、ビジネス要素もたっぷりで想像通りな上に単純に曲としてもよかった。

 

アイドルという職種上、ビジネス感を丸出しにするとファンから嫌われがちだし、感情論も飛び交ったりする可能性がある。ただ自分としては「アイドルも最終的にはビジネス」と思っているので、こういった楽曲をリリースしたのは好印象でしかない。JYPエンターテインメントの先輩であるTWICEはビジネス要素を強く出しすぎたためにバッシングも多く見られたし、何よりメンバーたちがダウンしちゃってる。同じく女性K-Pop界のトップであるBLACKPINKもビジネス要素がかなり高いが、アーティスティックな面やブランディングなど絶妙なバランス感を保っているし、物販面でしかダイレクトに稼ぎにいってます感がない。ITZYのみんなにもビジネスとのバランスを保ちながら、先輩みたく億を稼いでもらいたいものだ。

 

 

ってなわけで諸々込みでSWIPEめちゃくちゃ好き

 

ITZYの"SWIPE"をApple Musicで

 

 

3. ITZY - Sooo LUCKY

 

ITZYの"Sooo LUCKY"をApple Musicで

 

IT'z MEのNOBODY LIKE YOUやNot ShyのSURFのような、ちょっとチルっぽいポップス枠。特にNOBODY LIKE YOUのプライベートっぽくてリラックスしたMVを思い出した。ガールクラッシュで力強い感じのITZYも彼女たちらしいけど、毎回アルバム全体をチェックしているMIDZYにとっては、こういったスタイルの楽曲もITZYらしいと感じることだろう。

 

 

4. ITZY - #Twenty

 

ITZYの"#Twenty"をApple Musicで

 

こちらも2曲目のSWIPEと同様にトラップのノリが入っているものの、もっとK-Pop寄りで分解して音だけ聴いていくとヒップホップらしさはあまりない。最大の特徴はビートの抑揚のつけ方。普通曲ってサビでいちばん盛り上がるようになっているけど、#Twentyの場合はサビに近づけば近づくほどスピード感が落ち着いていく。BPMなど実際のスピードが変わっているわけではないのに、ボーカルとビートの雰囲気だけで違った雰囲気になっているのは面白い。ユナの早めのラップがハイライト。

 

 

5. ITZY - B[OO]M-BOXX

 

ITZYの"B[OO]M-BOXX"をApple Musicで

 

B[OO]M-BOXX(ブームボックス)と名乗っているだけあって音がすごく元気で、イヤホンで聴くよりもスニーカーでドカンと聴く方が映えそうな1曲。コンサートでダンスとかなしで、ITZYとMIDZYでざっくりと遊ぶのが楽しそう。LMFAOみたいな10年代前半のパーティーソング好きにもハマりそう。男性のバックコーラス的なのとかそっち系。単純にそっち系に振り切っているわけでなく、ビートチェンジもしっかりあってK-Pop的な曲に仕上がっているのも好印象。

 

 

6. ITZY - Gas Me Up

 

ITZYの"Gas Me Up"をApple Musicで

 

ITZYあるあるである「2分台の曲は遊びがち」に当てはまるGas Me Upは、24HRSやSHOOT!に通じる実験枠。

 

 

CRAZY IN LOVEでいちばん癖が強い

 

いきなりイェジのパートから始まるのがまず新鮮。スタートの聴きようによっては00年代前半のJuelz Santanaやさらに昔のラッパーのように感じるリュジンのラップパートも面白い。それにラップをするメンバーが全員癖のある感じで行なっているのもポイント。特にリュジンの2番の出だしは裏でも乗ったりと癖が強めで、いい意味でアイドルのラップっぽくない。

 

サビ前のブレイクは全てが絶妙

 

またビートとしてもサビ前で思いっきりブレイクするし、そこに合わせた歌い方も絶妙。「So pull it down」を担当したチェリョンとリアが最高なのはもちろん、それに続く面々も抜群。ITZYにも作詞した人にも作曲した人にも拍手を送りたい。

 

コンパクトかつB面だからこそできる面白さ

 

こういう曲って絶対長いとダレるというか、K-Popらしくするために盛り上がるポイントを入れないといけなくなるので、2分台でコンパクトにまとめてスパッと終わるのがいちばんいい。それに歌番組で披露したりダンスも込みで考えないといけないので、タイトル曲には絶対に向かない。短く、B面だからこその遊び。アルバム全体としてもいい変化球になっている。MVの収録曲の中でいちばんのお気に入りだ。

 

 

7. ITZY - LOVE is

 

ITZYの"LOVE is"をApple Musicで

 

SWIPEと同様にトラップの影響を結構受けた1曲で、こちらはがっつり歌モノ。サビ前では完全になくなるしサビでは少なくなるものの、それ以外は低音がなっていないだけでトラップのそれとほぼ同じ。

 

この曲を初めて聴いたときに似ているタイプだと思ったのは、Juice WRLDのAll Girls Are The Same。曲自体は似ていないが、エモっぽさというか切ない雰囲気のビートという点ではノリが全く同じだ。ITZYのLOVE isとJuice WRLDのAll Girls Are The Sameではベクトルは全く違うが、歌詞の切なく悲しい雰囲気も共通している。なのでJuice WRLDとNick Mira、Internet Moneyなんかの曲やビートが好きな人におすすめの1曲となっている。ヒップホップを全く知らない人でも、上の曲と聞き比べてもらえると、言いたい曲の雰囲気というものが伝わるだろう。

 

 

8. ITZY - Chillin' Chillin'

 

ITZYの"Chillin' Chillin'"をApple Musicで

 

8曲目のChillin' Chillin'に関しては、先ほどの例えよりももっとしっくりくるものがあったので、その曲を貼って感想を述べたいと思う。

 

2021年度版OH MY GIRLのLIAR LIAR?

 

 

Nonstopよりも前、韓国アイドルから愛される韓国アイドルとしてバズったOH MY GIRL、その時期の代表曲の1つであるLIAR LIAR。この曲はオマゴルの可愛らしさや歌詞の雰囲気と裏腹に、ビートのベースはかなりヒップホップ色が強くてタフ。そこにアイドルらしく高音で可愛らしさをプラスしたハードな1曲となっている。この曲のノリを2021年に行なったのがITZYのChillin' Chillin'って感じがものすごくする。メロディや歌い方などには可愛らしさがあるのに、ビートの音はハイハットや808 Glideなど現代のヒップホップに近いものも多い。オマゴルと同様に低音のパンチは女性アイドルにしては強め。この可愛くてキャッチーな雰囲気とヒップホップが持つタフな雰囲気のミックスはまさしく2021年のLIAR LIAR。

 

気になって上の文章を書いた後に調べてみたら、OH MY GIRLのLIAR LIARと同じく、David Anthonyという人物がITZYのChillin' Chillin'も作曲していた。やっぱりね!ってか自分の音楽的な感覚にびっくり笑。主観100%で書いてるブログなので自分の感覚ベースの内容なので間違ってたり、みんなの意見と合わないことも多くて当然と思って書いているけど、実は結構説得力あるんじゃね?CRAZY IN LOVEのレビューブログの自分のハイライトはここだね笑。

ブログを書く際に他人の意見が入ると主観100%じゃなくなってしまうので、仕入れておくべき情報以外はリサーチを全くしていない!ということを書いておく。リリースから日数も経っているし、誰かがツイッターとかで先に言っているかもしれないし。すごく自信満々に書いているけど、すでに話題になっている内容だったらすみません。

 

 

9. ITZY - Mirror

 

ITZYの"Mirror"をApple Musicで

 

K-Popお得意のラストはバラードで締めるやつ。いい悪いではなく、好みの話でいうとバラードは好きじゃないのでお好きな方はどうぞって感じ笑。ってかITZYってこういうエンディングにぴったりな曲をたくさん持っているけど、今コンサートを開いたとしたらどの曲で締めるのだろうか?やっぱりMIDZY?それともMirror?楽しい雰囲気でおわりたかったらBe In Loveもいいし。曲を量産している割にクオリティが高いITZYの贅沢な悩み。

 

 

 

 

 

ITZY初のフルアルバムはバランス抜群!これからの彼女たちにも期待が膨らむ

 

ITZYのファーストフルアルバム「CRAZY IN LOVE」のレビューは以上です。1~9曲目だけの感想となりますが、とにかくバランスがいいように感じられた。LOCOは王道のITZYらしさ、Sooo LUCKYはB面でのITZYらしさ。SWIPEではビジネスやマーケティング方面をカバー。#TwentyやGas Me Upはアルバムにメリハリをもたらすし、脇を固めるB面も多種多様。これまではミニアルバムだったので曲数が限られており、ありとあらゆる曲を入れるということはできなかったが、今回はフルアルバム!ということでこれまでのITZYの軸はブレずに色々見せて来た彼女たちの楽曲のスタイルが一気に集結した感じがした。まさに集大成。それでいて安定を求めずに挑戦した楽曲もたくさんあったのが、ITZYのアグレッシブさを表しており、若手でありながらスーパースターの仲間入りをしてる証明でもあるだろう。だから私はITZYが好き。音楽ベースでしか書いていないけど、普通にCSIみたいなバラエティも面白いし。

 

 

それと触れなかったけどインストが入ってて嬉しい人も多いのでは?DALLA DALLAでHIYADAMみたいにラップしてみてもいいし、ICYなんてループさせたらかなりラップできそう。In The Moringなんて歌がなかったら想像以上にシンプルな雰囲気だし、割とジェニのSOLOっぽいミニマムさもあったりする。歌なしで聴くと新たな一面も見れるかも?

 

 

このアルバムをラストに若手グループから中堅グループに以降、新たなフェーズになるかもしれない。タイトル曲のインストが収録されていたことからも分かる通り、ここまでのITZYの活動をまとめたとも考えられるCRAZY IN LOVE。韓国での活躍はもちろん、イルデも控えている彼女たち。これまでのまとめ的な作品でありながら、未来のITZYも楽しみにさせてくれる1枚でした!

 

 

 

最後にアルバム全体のApple Musicのリンクを貼っておきます。ぜひLOCOやSWIPEといったMVがある楽曲以外も聴いてみてください。様々な種類があるので、きっとお気に入りが見つかるはず。長くなりましたが、ありがとうございました。ではまた!

 

ITZYの「CRAZY IN LOVE」をApple Musicで

 

 

 

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